【後藤製菓の歴史】真心の手仕事で、おいしい笑顔と食文化を紡ぐ

生姜のピリッとした辛みと上品な甘さが特徴の銘菓・臼杵煎餅。

その起源は約400年前、臼杵藩主稲葉領主が江戸時代の参勤交代途上の食料として、米・麦・粟・ひえ等を材料に作り上げた保存食だったといわれています。

やがて小麦粉が主原料となり、かつて臼杵が一大産地であった生姜を味付けに加え、臼杵の食文化として現在まで紡がれています。

昔は家内工業として多数の製造元があり、現在も市内外に約7社が残っています。
その中で最も歴史が長いのが、今年で創業103年を迎える『後藤製菓』です。

大正8(1919)年創業

後藤製菓は大正8(1919)年に後藤猛が菓子問屋として創業。

当初は今の「居酒屋みかくと木もれ陽」の場所で飴などの菓子類をはじめ、臼杵煎餅の製造を開始しました。

猛は戦争で台湾に行っていたので、その伝手で砂糖が手に入ったらしく、また、手先が器用で結婚式の引出物の鯛の生菓子や駄菓子屋のいろんなお菓子も作っていました。

後藤家は代々、武士の家系で、大坂の陣で活躍した後藤又兵衛の子孫とも言われています。
二代目の喜世司の代には臼杵煎餅で内閣総理大臣賞を受賞。三代目の健一が引継いだ頃は、新町と畳屋町の二か所で製造していました。

【昭和48年〜】後藤製菓四代目の革新

昭和48(1973)年、四代目として重明が代表となり諏訪に工場を新設し、これまでにない柔軟な発想で新商品の開発に乗り出しました。

従来の臼杵煎餅に黒糖を使用し深みのある味わいした「臼杵煎餅・黒糖」、やわらかくアレンジした「うすきせんべい・生さんど」、洋風テイストにアレンジした「臼杵せんべいサブレ」、バニラ・抹茶味のアイスをサンドした「うすきせんべい・愛す」など、どれも銘菓・臼杵煎餅を軸に商品開発をおこなってきました。

そこには、

「伝統を守る為には、時代に即した変化が必要である

という考え方があり、変化した商品があるからこそオリジナルの臼杵煎餅の良さも更に引き立ち、より多くの人々に臼杵煎餅の魅力を伝えることができるという思いがありました。

また、臼杵煎餅を入れる貼り箱の製造を内製化し、本社兼工場を国宝臼杵石仏のお膝元に移設すると共に観光地での小売りや観光業も開始するなど、事業の幅も徐々に拡大していきました。

【令和3年〜】後藤製菓5代目へと事業継承

令和3(2021)年7月に五代目の亮馬へ事業承継を行い、新たなスタートを切りました。

亮馬は平成25(2013)年入社以来、積極的な営業活動や企画等を通して後藤製菓の成長に貢献してきました。

平成30(2018)年には100周年を記念した新ブランド『IKUSU ATIO(イクスアティオ)』を立ち上げた。

ローマ字で大分・臼杵を逆から読むIKUSU ATIOには、情報や流通など世界から日本、日本から大分、大分から臼杵のように大きい方から小さい方への流れを変えて、小さな町「臼杵」から大分、全国、そして世界へ向けて地域の魅力を発信するという気持ちが込められており、後藤製菓の風土とも言える「不易流行」を体現するブランドとして位置づけられました。

一枚一枚手塗で仕上げる臼杵煎餅の伝統製法や生姜の特徴的な味は残しつつ、味の組み合わせやバリエーションを広げ、大きさはかわいい一口サイズにアレンジ。

更に、原材料を有機素材に磨き上げたNEW 臼杵煎餅「百寿ひとひら」を開発し、発売直後の売上は前年比の140%を実現し、初年度で売上構成の2割を占めるまで成長させました。

SDGsを宣言

一歩ずつ順調に飛躍してきた後藤製菓だが、新型コロナウイルス感染症の影響は大きく一時は月の売上が前年比△70%まで落ち込み、休業せざるを得ない状況が続いていました。

このような苦境の中、

伝統を絶やすことなく地域とともに成長していくためにはどうあるべきか、自問自答を続けた末に「SDGs宣言」を掲げました。

SDGs宣言には「地域貢献」「地方創生」「環境保全」「働き方改革」の4つの柱が掲げられており、この内「環境保全」に係わるフードロス削減の取組みが注目を浴びつつあります。

【フードロス】ジンジャーパウダー

従来臼杵煎餅に使用する生姜は、一から自社で加工するこだわりで生姜汁を作っていましたが、その過程で発生する搾りかすは原料に使えず年間最大2tを廃棄していました。

この生姜の搾りかすをフードロス削減の観点から有効活用し、試行錯誤の上ジンジャーパウダーへ再加工することを実現しました。

搾りかすからできたとはいえ非常に辛みが強いこのジンジャーパウダーは、お客様からの評価も高く一般販売も好調に伸び、更に百寿ひとひらの原料として再活用することにも成功し、令和2(2020)年には廃棄量0を達成しました。こうした取組み評価され、農水省主催「フードアクションニッポンアワード2020」では全国1019産品の内10産品が表彰される受賞産品に選定されました。

新型コロナウイルスの影響とこれからの展望

コロナ禍で手土産の需要が大きく減少してしまった臼杵煎餅だが、元々は江戸時代の保存食が由来であるという過去の歴史を紐解き、現代の保存食へと再構築する挑戦も始まろうとしています。

数十年前は各家庭で缶に入れた臼杵煎餅が常備されていたように、災害意識が高まる昨今、保存食となることでもう一度身近な常備菓子として親しまれることを目指す。また、令和4(2022)年には大分空港が宇宙港になる機会に、保存食(≒宇宙食)という共通点から臼杵煎餅で宇宙食を目指すことも視野に入れています。

ワクワクする挑戦で未来を創る老舗を目指す後藤製菓は、これからも「不易流行」で歴史を紡いでいきます。

※後藤製菓の今後の動きについてはトピックスを御覧ください。